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パブリシティ

b-platz press vol.30大阪産業創造館発行4面2003年7月号

経験のなさは限りない可能性でもある



翻訳の会社を経営して気づいたのは、「この業界は労働集約的だ」ということだったそうだ。つまり、個々の翻訳者を囲い込んで作業を割り当ててゆくだけ。そこで福島氏は用途や媒体に合わせて文体や質、コストをマネジメントする「オーダーメイド」的翻訳サービスを開始した。これが顧客のニーズに当たり、客が客を呼ぶようになったという。業界の慣習に流されなかったからこそ誕生したサービスだった。


福島氏が都市銀行に入社した頃はバブル経済の真っ只中。マネーゲームの繰り返しに失望した同氏は、外国為替関連の部署を最後に4年で銀行を退職し、シンガポールや中国を巡って国際経験を重ね、WIPジャパンを設立する。語学力を武器に翻訳業界という未経験の業界に体当たりで参入した。もちろん業界のことは右も左も分からなかったが、自らの海外経験で「翻訳サービスを利用する側のニーズ」はわかっているつもりだった。大学時代に得た各国の友人たちの協力や、電話帳を使っての飛び込み営業も行いながら次第に信用と業績を伸ばしていった。

「翻訳の相場自体が検討もつかなかったので、最初は見積書さえ書けませんでした。同業者に下請けをお願いしたりして、少しずつノウハウを蓄えていったんですよ。そして次第にこの業界が、実は『労働集約型』であることに気づいたんですね。個々の翻訳者に仕事を外注して、翻訳会社はそれを束ねて流すだけ。でも、本当はそれだけじゃ不十分なんです。例えばマニュアルを英訳するのでも、米国向けか英国向けか、あるいは中国人のエンジニアに読ませるのかによって要求される文章表現はまるで異なっています。そこで、我々はそれまでの既製服のような一律の翻訳業務をオーダーメイド・サービスで提供するようにしたんです。業界の慣習に染まっていなかったからできことだと思います。もちろんそれだけではなく、信頼を築きあげるために納期は確実に守り、クオリティにもトコトンこだわりました。おかげでリピーターが増え、現在では新規顧客の約半数が既存のお客様のご紹介によるものです」。業績も順調に伸び、現在は、アジア、そしてヨーロッパへと海外進出を図っているが、同氏は会社を大きくすることにあまり興味はないそうだ。

「売上げウン億円とか社員数何千人なんて意味ないじゃないですか。規模を誇るよりも、業務に適正な数の社員を雇用し、社員全員を幸せにすることの方が、経営者としては、はるかに大切だと考えています」。


● WIPジャパン株式会社

代表取締役 福島良雄氏

神戸生まれの大阪育ち。高校時代に交換留学生として米国留学。大学卒業後、経済の中心を担う金融という仕事に憧れて大手の都市銀行に就職するもバブル期のマネーゲームに失望して退職。その後、企業経営に携わるためシンガポール、中国などを巡り、帰国後WIPジャパンを設立。座右の銘は「知行合一」。