パブリシティ

通訳・翻訳ジャーナル2005年12月号
第二特集いろいろな分野で活躍する Case3 スポーツの翻訳
「翻訳で国際交流の手助けをしたい、興味がある分野を仕事にしたい」
そんな発想から生まれたスポーツ翻訳
さまざまなドラマや感動を生むスポーツの世界。
国籍を問わず、いろいろな国の人が、同じルールのもとでぶつかり合う。
観客はその美しさ、力強さ、巧さに感嘆したり、拍手を送ったりする。
そこには1つの国際交流が生まれていて、スポーツ翻訳は、その交流に貢献するすばらしい仕事だ。
WIPジャパン(株)
第2言語事業部
大黒真一郎さん。
■ 国際交流に貢献するコーディネーターの得意を生かした翻訳分野
そWIPジャパン(株)はローカライズを含め、各分野の翻訳を手がける翻訳エージェント。同社のウェブサイトから、『SPORTS trans』と呼ばれる社内カンパニーのサイトへ飛ぶことができる。SPORTS
transはその名のとおり、スポーツ関連の翻訳を専門に行う社内カンパニー。この業界でスポーツを特化させ、積極的に営業を行うのは珍しい。確かにスポーツ翻訳は大きなマーケットとまでは言えなくとも、海外のスポーツ用品メーカーは日本でも人気があるし、海外で知名度の高い日本のブランドもある。また、オリンピックや各種世界大会など、毎週のように大小問わず何かしらのイベントが開かれ、翻訳の世界が比較的多く発生する分野ではある。しかしなぜ、スポーツに特化したカンパニーを立ち上げたのか。
「最初は、翻訳を通して国際交流と相互理解の手助けをすることはできないだろうかという考えが弊社の中にありました。そこで、私ももともと興味のあったスポーツの翻訳を専門的に請けようという試みからスタートしたんです」
スポーツ翻訳をおもに担当しているのは、第二言語事業部でコーディネーターを務める大黒真一郎さん。バスケットボールのプレー経験があり、スポーツにはとても興味があるという。そのうえ、スポーツの世界では言葉の壁を越えた交流が生まれる。まさに国際交流の手助けに相応しい分野なのだ。こうして、翻訳プロジェクトを進めるうえでクライアントと翻訳者に一番近い存在であるコーディネーターの得意分野を生かし、同社の売りのひとつとして営業を始めることになった。
■ 好きを仕事につなげられる魅力的な仕事だがスポーツ翻訳だけで食べていくのは難しい
スポーツ翻訳で受注するおもな仕事は、メーカーのウェブコンテンツ・プレスリリース、各種国際大会の映像翻訳・招致パンフレット、スポーツ関連のシンポジウムの報告書や、競技規則、雑誌記事など、翻訳ドキュメントは多様だ。翻訳者には言うまでも泣く各競技の知識が必要とされる。それは競技ルールであったり、専門用語であったり、また最新の大会情報であったりする。
「スポーツには、カタカナの専門用語が多く使われるのですが、英語をカタカナに直したらそれでよいかと言うと、必ずしもそうとは限りません。例えば“サッカー”。日本でいう“サッカー”は欧州の英語では”football”と言います。またアメリカでは”football”と言えばほぼアメリカン・フットボールを意味します。スポーツ翻訳では、そういった訳語選択が難しい。知識がなければ正しい翻訳ができません。翻訳者は、もともとそのスポーツに興味があったり、好きであったりする人がほとんどですね」
翻訳者はWIPジャパン(株)のデータベースで一括管理しており、得意分野としてスポーツを挙げている翻訳者や,実績などを考慮して仕事を依頼する。
「登録翻訳者には、サッカー関連のニュースサイトの翻訳を継続的に行っていたり、スポーツがテーマのテレビゲームの翻訳をしていたりなど、すでにスポーツ翻訳の実績がある人もいます」
それでも、スポーツ分野の翻訳だけで食べていくのは難しいと言うのが現状。翻訳者はほとんどが別の分野の仕事も多くこなしているようだ。
■ 需要が少ない分野で仕事を得るためには“興味”を生かそう
同社では、SPORTS transを含め、コーディネーターの得意分野を生かして、ウェブで積極的に営業を行っている。「好きな分野なので、仕事をしていてとてもおもしろい」と大黒さん。スポーツ翻訳のように、業界においてメインストリームと言えない分野においても、携わる人間にとっては魅力的な仕事となる。もちろん好きだからと言って、お遊び気分ではいけないが、しっかりとした翻訳物を仕上げてエージェントやクライアントから信用を得れば、大黒さんが話してくれた前述の翻訳者のように、継続的にスポーツ翻訳の仕事をすることだってできる。たとえ間口が狭くても、アプローチしてみるといいだろう。なによりその分野が好きで新鮮な知識情報を持っていることが強みになる。また、スポーツ翻訳では、そのドキュメントにより学術的なものから、コピー的な文章まで、さまざまな翻訳が求められるので、普段から、ウェブやテレビ、新聞・雑誌などでスポーツの情報を得るときに、文章表現を意識することをお勧めする。
現在、第二言語事業部を介して受けたスポーツ関連のものはすべてSPORTS transで引き受けている。今後は、WIPジャパン(株)のもうひとつの事業部、情報事業部で受注した仕事でも、たとえばオリンピック関連の情報リサーチなど、スポーツと翻訳が関わってくる仕事に関しては、情報事業部とSPORTS
transが連携して仕事を進めていきたいという。国際交流の大切な一環を担うスポーツの世界で、言葉の架け橋を築き上げる翻訳者の仕事は、小さなフィールドであろうと重要な役目。翻訳者の仕事ぶりによって、今後さらに国際交流が活気づくことだろう。
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